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UCバークレー留学記

カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)での思考の記録。

Policy Analysis: 「政策分析」か「政策立案」か

政策立案の技法/人材育成

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上記の教科書を翻訳した時、大きな課題となったのが、本書の主題である"Policy Analysis"にどの日本語をあてるのが適切か、ということでした。このことは、日本の一般的な意思決定の方法に関わることでもあるので、書き留めておこうと思います。

 
辞書的に、あるいは学術的に言えば、"Policy Analysis"の訳語の答えは出ています。「政策分析」です。アメリカで生まれたこの比較的新しい学問分野は、日本の学会でも紹介され、研究されてきました。
 
我々翻訳者も、本書の第1刷では政策分析という言葉で翻訳している部分が多いです。
 
しかし、日本語の「分析」という言葉には、「過去のことを」整理したり考えをまとめたりする、という意味合いが強いように思われました。
 
このため、「政策分析」という言葉は、過去の政策を調べたり整理したりすることのように取られがちです。実際、検索をすると、そのような一般的な意味で「政策分析」という言葉が使われていることが多いです。
 
しかし、この本書で使われる"Policy Analysis"という言葉は、「まだ起きていない未来の政策を立案し、意思決定する方法論・知識の体系」を意味します。過去ではなく不確実な未来をより良いものに関する方法論なんですね。
 
この違いは、日本語の「分析」という言葉と、英語の"analysis"という言葉が、必ずしも一致していないことから生じています。そして、日本では欧米に比べて「分析」という行為が日常的に行われていないという背景もあります。たとえば、アメリカでは".... Analyst"という職業はどの組織にも必ずいますが、日本にはそれに当たる職業名の訳語すらいまだにありません。証券アナリストくらいでしょうか。
 
このため、単に単語を置き換えるだけでは読者の皆さんに誤解を与えてしまう、と考えました。
 
以上のような背景があり、第2刷では政策分析という言葉を使わず、政策立案という言葉に置き換えています。実際、こちらのほうが文意としてもすっと入ってくると読者の方にも言われました。
 
なお、効果的な意思決定をするためにとても有効なツールであるこのPolicy Analysis、日本では実務家の手にはまだまったくといっていいほど届いていません。以前も書きましたが、志を同じくする仲間たちと協力しながら、ライフワークとして日本への普及に取り組んでいきたいです。
 

phdryugaku.hatenablog.com

 

ご参考

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