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UCバークレー留学記

カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)での思考の記録。

太陽光・風力発電は今また一つ大きなターニングポイントを超えた: ブルームバーグの記事より

2015年10月6日付けブルームバーグビジネスに掲載された面白い記事を教えていただいたのでご紹介します。

アメリカでは再生可能エネルギーの大規模導入のために歴史上はじめて石炭や天然ガスの稼働率(capacity factor)が低下し、自由化が進んだ市場では石炭や天然ガス発電所の採算悪化とコストアップを意味すること。そして、その傾向は今後一層強まるだろう、という記事です。

 

www.bloomberg.com

 

以下は当方の抄訳です。

 

太陽光・風力発電は今また一つ大きなターニングポイントを超えた

 

2015年10月6日ブルームバーグビジネスより

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-10-06/solar-wind-reach-a-big-renewables-turning-point-bnef

 

 ブルームバーグ・ニューエナジーファイナンス(以下「BNEF」)によれば、風力発電はドイツとイギリスでは政府の補助金を受けなくとも最も安い発電手段となった。G7諸国のなかでこのラインを超えたのは初めてのことだ。

 

 しかしアメリカでは、さらに面白いことが起きている。

 

 アメリカで起きていることを理解するためには、「設備利用率」(capacity factor)を理解しなければいけない。これは、発電所がフル稼働した場合の最大の発電量と、実際の発電量との比率のことを言う。

 

 例えば太陽光発電プロジェクトのことを考えてみよう。夜に太陽は出ていないし、日中でもその明るさは天候や季節によって変わる。このため、あるプロジェクトは一番日光の強い時間での発電量がずっと続くのであれば最大100メガワット時の電気を1年間で発電できるのだが、実際には年間平均すればその最大値の20パーセントを発電したとする。このとき、このプロジェクトの設備利用率は20パーセントとなる。

 

 非常に高く安定した設備利用率は化石燃料を使った発電所の強みだった。例えば、アメリカの平均的な天然ガス発電所の設備利用率は約70%である(100に達しない理由は、需要の季節変動やメンテナンスのための運転停止などである)。しかし、この強みが変わりつつある。そしてそれは重大な意味を持つ。

 

 再生可能エネルギーの大規模な導入によって、化石燃料を使った発電所の設備利用率が初めて下がった。ひとたび太陽光発電所や風力発電所が建設されれば、発電するために必要な追加的費用(経済学でいう限界費用)はほとんどゼロ、無料だ。一方、石炭や天然ガスによる発電所では、発電のために必ず燃料を必要とする。もしあなたが電力会社で、これらのどちらかを選ぶとしたら、いつだって無料のものを選ぶものだ。

 

 そしてこれは、時間がたつにつれて強固になるサイクルなのだ。より多くの再生可能エネルギーが導入されれば、石炭や天然ガスの発電所の設備利用率が下がる。設備利用率が下がれば、発電費用が上がる。石炭や天然ガスによる発電費用が上がれば、より多くの再生可能エネルギーが導入される。

 (略)

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 風力と太陽光による発電は、アメリカの発電量の中に占める割合はごく一部だった。2014年の時点でも約5%である。しかしBNEFによれば、その発電量は等比級数的に伸び続けているため、石炭や天然ガス発電所にも影響を与えるほどになった。

 この設備利用率の変化が重要な理由は二つある。第一に、再生可能エネルギーは電力市場において破壊的な力を持ちつつあるが、また一つそのサインが現れたといえる。ほんの数年前とは違い、アメリカにおいて再生可能エネルギーを無視することはもうできない。(略)

 

 第二にこの変化は、電力会社が石炭や天然ガス発電所の投資計画を立てるときに直面する新たなリスクとなる。歴史的に、電力会社が投資計画を立てる際には、こういった発電プラントの高い設備利用率は固定(保証)されたものとして電力費用を計算してきた。しかし、数十年の稼働期間を視野に入れて数千億円の発電プラントへの投資を計画する者は皆、時間がたつにつれて発電プラントが現在の設備利用率ほどには使われなくなってしまう可能性を考慮しなければいけない。

  

設備利用率の変化

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 設備利用率低下の最も大きな要因は、「再生可能エネルギーによってベースロード電源の稼働が減ったこと」だとBNEFのジャクリーン・リリンシュタインアナリストは語る。年間の最も電力需要の高い時期にだけ発電を行う発電所、すなわちピーク電源の役割も小さくなった。どちらのケースに関しても、石炭や天然ガス発電からの電気はより高くなり、得られる利益はより小さくなる。

 (略)

最新の太陽光発電コスト(州別)

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  化石燃料に対する風力発電と太陽光発電の経済的利点は価格だけにとどまらない。ともあれ、BNEFによれば、2015年後期の時点で世界のすべての主要地域で新たな石炭・ガス発電プロジェクトのライフサイクル費用は大きく増加している。そして同じく世界のすべての主要地域で、再生可能エネルギーの発電費用は低下し続けている。