UCバークレー留学記

カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)での思考の記録。

英語文書を書くときにどこまで日本語で準備すべきか?:母国語の持つ二つの機能

英語で研究費のプロポーザルを書いたり、研究発表の原稿を書いたり、以前であれば留学の出願時にエッセイを書いたりするときに、毎回直面してきた選択があります。

それは、英語で文書を作るときに、どの段階までを日本語で書くべきなんだろうか?

というものです。

最近よく聞くのは、英語らしく書くためにはかなりの初期段階で英語で書き始めるべきという話です。

アウトプットという意味ではその通りだと思います。ただ、自分の状況(20歳になって初めて海外に行った純粋国産)に合わせてもう少し正確にいうとこうなります。

 

注意: これは相当気合の入った、長文の文書作成の時向けです。研究の月報や授業の課題ペーパーなどの日常的で短いものは、最初から英語で書きます。

 

自分の現在の英語力を所与としつつ、かつ時間制約のもとで成果物の質を最大に高めることを目指すなら、

  1. 中身が固まるまでは日本語で徹底的に検討する。焦って中身が固まる前に英語で書き始めるとあとから修正するのは大変な(時間がかかる)のでがまんする。
  2. 中身が60%固まったと思ったら、まず日本語で数ページの構成(短いものならA4の1枚紙(one pager))にまとめて、数回推敲する。ここで90%くらいまで高める。構成を作って初めてわかる論理のずれや飛躍がわかることも多い。
  3. 構成的にはこれで90%完成、と思った段階で、英語で書き始める。(100%としないのは、英語の文書の完成度は英語でしか図れないためと、いつまでたっても英文に入れないことを防ぐため)

という形になります。3.だけを見ると、英語でほとんど書いているように、はたからは見えます。しかし、実際に文書を書くときに最も重要なのは中身をよくすること。そこについては英語を一切使っていません。

以上が、この10年間、何度も試行錯誤して失敗を繰り返しながら得た自分なりの方法です。

 

このやり方の根っこにあるのが、母国語(自分にとっては日本語)の持っている二つの機能です。

一つはもちろんインプットとアウトプット。日本語で読み、書き、聞き、話すということです。

そして二つ目は思考(考えること)の実装というか、考えることを可能にする機能です。我々は言葉を使って考えます。決してアウトプットのためだけに言葉を使っているわけではありません。レンガを一つ一つ積み重ねていくように、論理を精緻に組み立てていくことは、言葉がなければできません。話して、書いて、初めて自分がなにを考えていることを知ることさえあります。特に、抽象的なことを長時間(つまり何ステップも経て)考えることは、言葉の助けなしには不可能でしょう。

 

そして、まかりなりにも10年間英語を勉強し、仕事や研究で苦労しながら使ってきて、うすうす感じてきたこと。それは、一つ目の機能はそれなりに英語で達成できたとしても、二つ目の機能=思考の道具には現実的になりえないのではないか、という結論です。つまり、英語で「考える」ことはできないのではないか。なぜならそれによって思考の速度が大きく違うので、時間の制約のもとでは、思考のパートは英語で代替するよりも日本語でやったほうがだんぜん早いからです。

もちろん、英語で話したり聞いたり、読んだり書いたりしているときには日本語を挟んだりしません。ここは英語のまましています。

しかし、言葉の持つ、ある意味より重要な後者の機能、つまり考えることについては、現実的に日本語に頼らざるを得ないなあという結論に至りました。

特に、思考の抽象度が高まる場合、正確かつ精緻な議論が必要になる場合(論理のずれや飛躍が許されないような)、思考のステップが多い場合などは顕著です。つまり、研究をする場合はかなり日本語の助けが必要になります。他方で、前職のような普通の仕事をやる場合にはそこまでこの限界を感じたことはありませんでした。

 

そんなこっちゃ英語圏では戦えないよ、という気もしますが、この年齢になると、手持ちの武器で(制約条件の下で)戦わざるを得ないのが現状です。

以上はあくまで仮説ですので、5年後には結論が変わってしまうかもしれないですが、今の考えということで書き留めておきます。

 

ご参考

phdryugaku.hatenablog.com

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ハロウィンの季節。肌寒くなってきました。

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